山へ。
「これからヒノキを一本伐ります。」
「今から木を伐ります。」
「頭の上に木が倒れてきたら
逃げないと命を落とします。」
「よそ見をしないで、
自分の身は自分で守ること。」
その真剣な眼差し、語気の強さは、
伝える相手が子どもたちであっても
少しも和らぐことはなく
これから木を一本伐るということが
どういうことなのかを
包み隠さず伝えてくれます。
伐採の流れとしては、
まず、木こりの杉野さんが倒したい方向に
”受口”と呼ばれる切り込みを入れ、
続いて反対側から”追口”と
いう切れ込みを入れます。
全身オレンジ色の作業服を
身につけた杉野さん。
腰に付けた熊鈴が心地よい音を響かせ、
てきぱきと準備を進めながら
木が一本なくなることでこの場所が
どのくらい明るくなるのか、
伐る前にこの”暗さ”を覚えておいてほしい、
と写真撮影を促します。
立ち会いに来ていた
山主の安藤さんのご挨拶があり、
粛々と山の神様にお供えをしたら、
いよいよヒノキの伐採です。
そして、そんな
子どもたちの様子を見守りつつも
受口を作る際の、
辺りにフワッと漂う木の香りに
心ときめかせ、
文字通り森林浴にふける保護者の方々。
続いてカンカンという斧の音
最初は先の方がぐらぐらと揺れるくらい。
倒れたばかりの木に
子どもたちが次々とまたがり、
手で触ったり引っ張ったり
叩いてみたり。
計算通りに2本の木の間に
倒れたヒノキを囲んで
無事作業を終え、
いくぶん表情を和らげた
杉野さんが解説してくれます。
普通、林業の現場では、
すぐに枝葉を落として
すぐに枝葉を落として
売り物になる長さに伐り、
搬出、運搬するそうですが、
それを行わず、
伐った木は、
その木が育った森の中で
「葉枯らし」を行う。
搬出、運搬するそうですが、
それを行わず、
伐った木は、
その木が育った森の中で
「葉枯らし」を行う。
木は葉っぱがついたままなので、
光合成を続けるが、
根は切り離されているので水は吸えず、
木の本来の生体能力を利用することで
木が穏やかに乾いていく。
葉っぱが光合成を止める
数ヶ月から半年、
このまま置くことで脂分が残り、
乾いているけどしっとりとした
木材として良い状態になるそうです。
光合成を続けるが、
根は切り離されているので水は吸えず、
木の本来の生体能力を利用することで
木が穏やかに乾いていく。
葉っぱが光合成を止める
数ヶ月から半年、
このまま置くことで脂分が残り、
乾いているけどしっとりとした
木材として良い状態になるそうです。
加えて、太陽の光が弱まり
光合成が穏やかな秋・冬・春の季節、
その中でも6~7回訪れる新月期と
呼ばれる期間に伐採することで、
根から吸い上げる水の量が少ない
木を選ぶことができる。
光合成が穏やかな秋・冬・春の季節、
その中でも6~7回訪れる新月期と
呼ばれる期間に伐採することで、
根から吸い上げる水の量が少ない
木を選ぶことができる。
満月の頃はバイオカーブの上昇がピークで
植物の澱粉が増え虫がつきやすくなり
新月の頃は下降のピークで澱粉が減り、
虫が寄りにくくなる。
植物の澱粉が増え虫がつきやすくなり
新月の頃は下降のピークで澱粉が減り、
虫が寄りにくくなる。
子どもたちが元気よく遊びまわる間、
倒したばかりのヒノキの根元に近い部分から
大きな輪切りを作り子どもたちにプレゼント。
水分をたっぷり含んだ輪切りを
太陽に透かしてみると
オレンジ色に透ける部分と
くっきり分かれて見えて、
また驚きの声が広がります。
倒したばかりのヒノキの根元に近い部分から
大きな輪切りを作り子どもたちにプレゼント。
水分をたっぷり含んだ輪切りを
太陽に透かしてみると
オレンジ色に透ける部分と
くっきり分かれて見えて、
また驚きの声が広がります。
輪切りを作る際に出た木屑も
ヒノキの香りがいっぱい。
保護者の手で丁寧にすくって後で
みんなで分けて持ち帰りました。
ヒノキの香りがいっぱい。
保護者の手で丁寧にすくって後で
みんなで分けて持ち帰りました。
「杉野さんはね、木を一本切ったら
全部使えるように工夫しているんだよ」
全部使えるように工夫しているんだよ」
という先生の言葉を思い出します。
標高1000メートル、
樹齢200年300年を超える巨木の
そびえ立つ天然林。
本来なら靴の汚れを落としてから
入るべき、大切な森です。
樹齢200年300年を超える巨木の
そびえ立つ天然林。
本来なら靴の汚れを落としてから
入るべき、大切な森です。
入り口で一人ずつ
登山者カウンターを回し、
杉野さんを先頭に長い列を組んで、
そびえ立つ木々の中を進んでいきます。
登山者カウンターを回し、
杉野さんを先頭に長い列を組んで、
そびえ立つ木々の中を進んでいきます。
入り口付近にある公園広場で
敷物を広げ、まずは腹ごしらえ。
見渡す限りあちこちに雪が残り、
予想以上の寒さの中、皆で肩を寄せ合って
お弁当を食べました。
敷物を広げ、まずは腹ごしらえ。
見渡す限りあちこちに雪が残り、
予想以上の寒さの中、皆で肩を寄せ合って
お弁当を食べました。
子どもの足と、
夏タイヤの車での帰路を考慮して
夏タイヤの車での帰路を考慮して
今日はショートコースにしましょう、と杉野さん。
「(倒れている木を指して)このくらいの範囲で
地球上の人より多い数の微生物が
生息しています。」
生息しています。」
「倒れた木が微生物を育み、葉を虫が食べ、
栄養を作り栄養のある森は
綺麗で美味しい水を作る。」
栄養を作り栄養のある森は
綺麗で美味しい水を作る。」
「倒れた木の周りに落ちた
木の子どもがまた大きな木になり、
影を作り、命を育み、倒れ、また光が差し込む。
ここだけで食物連鎖が完結しているのです。」
木の子どもがまた大きな木になり、
影を作り、命を育み、倒れ、また光が差し込む。
ここだけで食物連鎖が完結しているのです。」
倒れた樹木に皆、手のひらを乗せます。
「この柔らかさを覚えておいてください。
微生物がだんだん柔らかくした樹木の感覚を。
柔らかくなった地面の感覚を。
これが微生物の作りだした環境なのです。」
これが微生物の作りだした環境なのです。」
小一時間ほど森の中を歩き、
元の入り口に戻ってきました。
この頃には子どもたちも緊張が解け、
すっかり人気者となった杉野さんの周りに
押し合いへし合い。
元の入り口に戻ってきました。
この頃には子どもたちも緊張が解け、
すっかり人気者となった杉野さんの周りに
押し合いへし合い。
木こりのお仕事は、
一本の木をきちんと使うということ。
一本の木をきちんと使うということ。
伐採する木や、その木が育った森に、
その森を支える数多の命が
そこに在ることへの敬意と感謝、
その真摯な姿、
シンプルな思想に
終始胸が熱くなる思いでした。
その森を支える数多の命が
そこに在ることへの敬意と感謝、
その真摯な姿、
シンプルな思想に
終始胸が熱くなる思いでした。
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