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学園が設立して14年目にして、念願の12年生卒業式が行われました。

初めての卒業生は2人です。
1人は、学園が設立して3年目、赤池から今の地に学園が引っ越しをした年に入学してきたYちゃんです。

その年の新入生は5人でした。30年以上使われていなかった民家を、入学前に一緒に教室にしつらえました。土壁を剥がし漆喰を塗り、畳を上げて木の床を張りました。
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開校7年目までは学園全体の生徒数もあまり増えませんでした。同級生が1人引っ越し、1人転校していき、8年生が終わる時には5人の同級生がYちゃん1人になっていました。そんな状況だったので私は中等部設立に希望を持てずにいました。

しかし、Yちゃんのお母さんは違いました。「私は娘をこの学校の12年生として卒業させたい!」と揺るぎませんでした。その言葉とお母さんの姿勢に励まされ、中等部設立に向けて大きく前進しました。
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このクラスは2年生から下のクラスと合同で授業をしてきたので、何かと下に合わせて進んできたクラスでした。物足りないこともあったと思います。そんな中でも、真面目な性格の彼女は、何事も真っ直ぐに取り組んでいました。

そして12年生になった頃、やりたい事が見つかりました。シュタイナー学校での12年生は卒業演劇、卒業プロジェクト、卒業オイリュトミーと、ボリュームの大きな行事が目白押しです。

そこに取り組むために11年間準備してきたと言っても過言ではないほど、12年生はこの教育の集大成です。クラスメイトや教員、ご両親に支えられて彼女は夢の実現に向けての努力と12年生課程の両立をやり切りました。

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卒業式で彼女は言いました。
「公立に行っていたら、と想像してみました。好きな部活に入って気の合う友達と楽しく過ごしていたかもしれない、と思いました。でも、ここまで強く勉強したいと思えたのは、この学園で育ったからだと思います。」

彼女を12年間見てきた私は、勝手に親戚のおばちゃんの気持ちになって卒業していく彼女を見ていました。自分の子以外の子どもの成長を12年間も見せてもらえるなんて、なんて贅沢なんだろうと、この時初めて思いました。

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そして、もう1人の卒業生はTくんです。7年生で転入以来すくすくと背が伸び、バスケと音楽が大好きな夢見る少年。自分でも「6年生から成長してなかった」と言うほど、心ここに在らずで自分の世界が全てのように見えました。

そんなTくんが急成長を見せたのは、12年生劇のときでした。合同クラスゆえに下の学年の3人に協力してもらわなければ、劇はできません。何度も話し合い、合宿もしてお互いを知り、彼の両親の全面協力もあって劇をやり遂げました。それからの彼は表情が変わりました。毎日ニコニコと楽しそうに、しかも何事にも前向きに参加するようになりました。同じクラスの娘は「Tくんが変わってくれて本当に助かった。劇の前とは180度違うんじゃないかな」とよく言うほどです。

卒業記念としてホールの扉に装飾を施し、つい先日完成しました。テーマは卵。卵の中はいろんな色や形の木のパーツがびっしりと詰まっています。それは人それぞれの個性を現しているのだそう。その卵をそっと下から支える手があります。とても素敵な扉になりました。

卒業式でカノンを弦楽演奏してくれた後輩たちに彼は言いました。
「扉の卵のように、それぞれ違う個性が調和する、不協和音のこともある。でもそれぞれが音を磨いて美しいハーモニーになることがすばらしいし楽しい。ここで僕は変わった。変わった自分が大好き。みんなも自分を好きでいてね。」

この卒業ギリギリの12年生で人はこんなに変われることを彼は教えてくれました。

2人の成長を間近で見せてもらえたこと、そしてこの教育の凄さを体感させてくれた12年生の2人に、感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとう。そして卒業おめでとう。